たとえば、きみのわらったかお 斎千Ver.

 たったったったっ、と規則正しい小走りな足音。考えずとも誰かはすぐにわかる。

「斎藤さーん!」

 こういう時の千鶴の足音は軽い。女子ならではだろうか。

「どうした?」

 外は雨。それでも巡察は待ってくれない。

 雨で視界が悪くなることを理由に留守番が決定している千鶴が、自分の元へとやってきた。

「これ・・・」

 小さな両手に大事そうに包まれていたものを斎藤へと差し出す。

 今更かもしれませんが、と申し訳なさそうに小さく頭を下げた。

「お守りです。中は見たらだめですよ?」

 神社で買うお守りには、札が入っている。中身を見ることで禁忌を犯したとされ、ご利益がなくなるから開けるなと言われている。

 しかしこのお守りは見るからに手作りだ。

「中身は内緒です。開けたらご利益なくなっちゃいますから」

「・・・ありがとう」

 どういたしまして、と千鶴が笑った。

「安全祈願です。・・・巡察、お気をつけていってらっしゃいませ」

 

 

 新選組に安全祈願など不要のものだ。

 命を落とす覚悟で、日々の巡察を行い、京を守っている。

 それを知らぬ千鶴ではなかろうに。

「安全祈願、・・・か」

 ぽつりと呟いた斎藤の言葉を微かに聞き取った平隊士が「どうかなさいましたか?」と振り返った。

「後ろを振り向くな。いつどこで誰が狙っているかもわからん」

「・・・失礼致しました」

 慌てて前を向いた彼に「ただの独り言だ」とだけ言うと、口を閉ざした。

 

 何を願って、彼女はこれを作り、手渡したのだろう。

 いつ命を落とすかわからぬ身の上なのに。

(嬉しい、と思ってしまうのは何故なのだ)

 笑顔と、お守りと。

 あの花のような笑顔は、見ていて心が落ち着く気がする。

 懐に入れたそれが、千鶴の温もりを有している気がして、斎藤が思わず微笑んだ。

 どこかで団子でも買っていこうなどと思いながら。

 

 

 

 

 

 

ヒトリゴト。

 短っ!

 全ジャンル共通タイトルで何か書こうと前々から思っていて、久々にタイトル考えました。・・・いや、あんまりいいタイトルじゃないかもしれませんが(汗

 ということで、コルダバージョンと遥か2バージョンもあります。

 

2011.5.19UP