(どうするべきか・・・)
葛藤が続く。
【君の素足】
暑い日だった。
どことなく巡察に行く隊士達の態度が悪くなっているような気がして、一番後ろを歩く斎藤が「気を抜くな」と声をかけてもあまり変わらない。さらにそのことで苛立ちを隠さない三番隊隊長を恐れてか、ようやく気を引き締める始末。
その程度には暑かった。
「三番隊、ただいま戻りました。異常ありません」
「ご苦労だったな。今日は暑かったから水浴びでもさせてやれ」
「・・・ありがとうございます」
本当ならばそのまま稽古にでも行かせたいところだが、土方の気遣いを無駄にするわけにもいかない。
「千鶴はどうだった?」
「本日は同行しませんでした」
「どうかしたのか」
「少し体調が優れぬようでしたので、部屋にて休息するように言ってあります」
「暑いからなー。誰か看病してんのか?」
「山﨑くんが看ているはずです」
「そうか。ちっと様子見てきてくんねえか」
「かしこまりました」
報告は夕餉の時でいいと言う土方に一礼して部屋を出る。大部屋で控えていた三番隊の隊士達に土方からの伝言を伝えると・・・一斉に歓声を上げながら我先に 走って行った・・・千鶴の部屋を目指す。途中、桶の水を換えにきた山﨑に具合を聞くと、暑気中りだろうという見立てだった。
「とにかく涼しくすることが大事なのですが、・・・さすがに、ちょっと・・・」
一番いいのは脱がせることだが、千鶴にはそれができない。そのまま看病を交代することにして、ついでに軽く自分も体を拭いた。先ほど隊士達が我先に走って行った気持ちがわからなくもないが、明日の稽古はより一層厳しくしてやらねばと思いながら、新しく汲み直した水を持って行く。
「千鶴。入るぞ」
返事はない。そのまま障子を開けると、顔を真っ赤にした千鶴が眠っているのだった。
袴を脱いでいるからか、女子らしく見える気がする。少しでも涼しく、ということで脱がせたのだろう。
手ぬぐいを絞って額に乗せる。眉間に寄っていた皺が、幾分か和らいだ。
(扇ぐものは・・・)
辺りを見回すと、団扇が置いてあった。それでゆっくりと扇いでやる。
「・・・ふ・・・」
気持ちよさそうに千鶴が唇を僅かに上げる。時折自分も何度か扇ぎ、千鶴も扇ぐ。
「・・・さいと、・・・さん?」
「山﨑くんと交代した。喉が渇いてはおらぬか?」
言われると急激に喉が渇いて「お水・・・欲しいです・・・」と斎藤を見上げる。わかったと頷いて、千鶴を抱き起こそうと手を伸ばした。
背中に手を添えると「一人で大丈夫です」とやんわりとその手をよける。斎藤の手を煩わせたくないという千鶴の気遣いなのだろう。
「今は気遣うな、気にする必要はない」
「・・・ありがとう、ございます」
小さくぺこりとお辞儀をして、その手を取った。・・・熱い。
「今、三番隊の隊士が水浴びをしている。それが終わったらあんたも水浴びしてくるといい」
「はい」
こくこくと湯飲みから水を飲む。あっという間に飲み干してしまい、結局3杯ほどの水を飲んだ。
「ありがとうございました、斎藤さん」
「少し横になるか」
はい、と頷き、また背中に手を添えた時。
(・・・・・・!)
水を飲ませることに集中していたから気付かなかったが。
(足が・・・)
千鶴の素足が、見えている。
足首だけではなく、膝上までの、・・・肌が。
「っ・・・・・・!」
「斎藤さん?」
顔を背けようにも、足から逸らせば千鶴の顔。千鶴の顔を直視できるはずもないから、結果的にその肌色を視界に入れたまま正面を見るしかなく。
「どうかしましたか?」
「いや、何でもない。横になるのだったな」
「すみません、斎藤さん」
「気にするな」
気にするべきは自分の醜態だ。
おそらく今の千鶴と同じくらい顔を真っ赤にさせて、視線が定まらず。
どうかしたのかと大きく顔に書いた千鶴に「水を持ってくる」と立ち上がる。そうして千鶴の全体が視界に入ってしまい、更に顔を赤らめた。
「・・・・・・!」
とうとう片手で口元を覆ってしまいながら、逃げるように部屋を出た。
(鍛錬が足りん・・・!)
明日は自分も隊士達と一緒に稽古に稽古に打ち込まなければと気を引き締めつつ、先ほどの千鶴の姿態を頭から追い出そうと早足で井戸へ向かうのだった。
そうして部屋に戻ってきた斎藤が、先ほどの格好のままで眠っている千鶴をまた(学習せずに)視界に入れて、あからさまに動揺するまで、あと三分。
ヒトリゴト。
このタイトルで、全ジャンル書きます。
取り扱いカップル全員が「むっつり」だということが発覚致しまして・・・こんな感じのお話がまだ(笑)続きます。
シチュエーションは基本的に同じような感じです。ただ、そこから先どうすすむかはキャラ次第(笑
とりあえず、一番むっつりさんの(酷い!!)斎藤さんがトップバッターです。
2011.7.9UP