夜。
布団に入っても眠れない。いつもならくたくたに疲れてすぐに眠れるのに。
(泰継さんに悪いことしちゃったな)
八つ当たりしてしまった。神子が誰でもいいとか、よく覚えていないがそんなことを叫んだ気がする。でも泰継は受け止めてくれた。「お前は、お前だ」と言ってくれた。
「明日、謝ろう」
そう思ったのを最後に、花梨の意識がぷっつりと途絶えた。
夢を見た。
土蜘蛛を倒せずに、吐き出した糸に絡めとられる夢。もがけばもがくほど糸が複雑に絡み合って解けない。
「助けて・・・!」
一緒にいるはずの誰かの名前が出てこない。呼ばなければ助けてくれないことはわかっているのだが、肝心の名前が出てこないのだ。
「お願い、助けて!」
名を呼ばれぬその「人」は、じっと花梨を見つめている。糸に絡めとられ、姿が見えなくなっていく、その様を。
名前を思い出さなければと焦るほど思い出せない。喉まで出掛かっているというのに。
でも今は名前を思い出すのが先じゃない。ここから抜け出すことが先だ。
「お願い、助けて・・・、・・・・・・・!」
名前が口から出掛かった所で目が覚めた。しかも寝言を盛大に盛大に叫んだ気が・・・
「神子様。神子様。大丈夫ですか?何か夢見がお悪かったようですが・・・」
紫姫が飛んできたのを「大丈夫」とようやく搾り出す。怪訝そうにしながらも、自室へと引き上げていく気配を感じると、大きく息を吐き出した。
よりによって、土蜘蛛。昨日倒せずに背走するはめになった怨霊。
(ああああ・・・嫌な夢見ちゃったな・・・)
更には、自分を助けることなく傍観していた人物。正確には「達」だ。
そう。一人ではなく、二人いた。どちらの名前を呼ぼうとしたのかわからない。けれども、確かに呼ぼうとしていたその名は。
「泰継、さん・・・」
顔を浮かべていたのは、密かに想いを寄せる幸鷹だった。なのに泰継を呼ぼうとしていたのだ。
なぜだろう。
泰継ならば、陰陽の力で容易く助け出してくれると思ったのだろうか。
「・・・違う。そういう気持ちじゃなかった。・・・あれは、」
見捨てないで欲しい。自分を見て欲しい。
・・・助けて、ほしかった。
一人の女の子として、見て欲しかった。助けて欲しかった。あの気持ちは。
「・・・あ」
花梨ががっくりとうなだれた。
ヒトリゴト。
花梨ちゃんが自分の気持ちに気づきます。どちらも同じくらいの大きさで想う心。いずれはどちらかを諦めなくてはならないと思うのに、そう思えば思うほど苦しくなっていく。次回はそんなお話になる・・・予定、です(自信がナイ
2011.7.13UP