無知だと思われたくなかったから・・・ 香穂子Ver.

 タイトルは「無知だと思われたくなかったから、君がどういうつもりなのかなんて訊くのが怖かった」です。文字制限オーバーの為・・・

 

 

 最近はまっているものがある。
 ヴァイオリンの練習は自宅でできないから、主に譜読みに当てられるのだが、気分転換にとクラスメイトから薦められた一冊の本からそれは始まった。
 ただ淡々と進行していく恋愛話なのだが、娯楽として読むならば山あり谷ありのほうが面白いと思うのだ。
 しかしこの単調さが「もしかしたら次こそは何かあるかもしれない」と続きを気にさせて、結局徹夜で読みきるはめになった。
 寝不足で玄関先に現れた香穂子に、月森が「具合が悪いのか?」と聞かれて徹夜したことを告げると呆れ顔で盛大なため息をつかれたことはこの際横に置いておく。
 クラスメイトには面白かったと言って返したが、やっぱり自分としては多少の壁は必要だと思う。
 休み時間、教科書を借りに来た天羽に聞いてみると「まあそうねえ」と言いながら去っていき(課題が終わっていないとかでダッシュして行った)、土浦に聞 けば「・・・悩み事があるんなら聞くぜ」と肩を叩かれ、カフェテラスで会った森には「月森くんに何かされたの?」と心配され、その帰りに会った柚木には思 いっきり蔑んだ視線で見下ろされた。
 そして隣の席に座る加地には「・・・恋愛は平坦じゃつまらないよね」と意味ありげな微笑を浮かべ・・・どうしてこうも皆意見が揃わないのだろう。というより、何故自分を心配するようなことばかり言われるのだろう。

「月森くんは、恋愛に障害って必要だと思う?」
 恋愛に障害はつきものよね、と聞いてみると「どういう、意味だろうか」と真面目な顔で返されてしまった。
「何もない恋なんてつまらないでしょ?その障害を乗り越えて行けたら、二人の心だってもっと深くなるし。だから恋に障害はつきものだよね?でもさ、土浦く んも森さんも天羽ちゃんも柚木先輩も加地くんも、どうしてかわからないけど私を心配するようなことしか言わないんだよね。まるで月森くんと何かあったみた いに・・・月森くん?」
 気のせいだろうか、少し青ざめた表情でずっと俯き加減に歩く月森に声をかけるが、返事がない。
「聞いてる、月森くん?」
 少し肩を揺すってみると「・・・聞いていなかった」とすまなさそうに謝った。
「えー、聞いてなかったの?もう、月森くんてば・・・もしかして疲れてる?ヴァイオリンの練習毎日見てくれてるうえに、月森くんの練習もあるんだもんね。もし辛かったら、一日おきとかでも・・・つーきーもーりーくーん?」
 明らかに話を聞いていない月森に半ば怒りながら名前を呼ぶと、ハッと気付いて「・・・すまない」と呟いた。
「もう!月森くんてば!どうしちゃったの?私の練習毎日見てくれるの、私は嬉しいけど、月森くんには負担になってるんじゃない?もしそうだったら・・・」
「いや、大丈夫だ。すまなかった、話を聞いていなくて」
「・・・別にどうでもいい話だからいいけど・・・」
 月森がピタリと止まった。
「どうでもいい?」
「友達から借りて読んだ本が、淡々とした話だったんだよね。でも私としては障害があったほうが面白いと思うんだけど・・・」
 月森くんはどう思う?とちょこんと首をかしげた香穂子に、月森が大きく目を見開き、次いで思いっきり息を吐き出した。
「え、何?私、何かした?」
「いや、何でもない」
 どことなく月森がげっそりしているような気がするのは・・・気のせいだと思いたい。












ヒトリゴト。(ブログより

最初に月森バージョンを書いて、読み返した時に香穂子バージョンも書こう!と思っていたのです。
ようやく書けました。